拝啓、本庄勝様
現役時代、本庄勝は
山のように送られたファンレターを
オフの日に読むのが何よりも楽しみだった。
文章こそつたないが
全国の子供たちから送られたその手紙には
これ以上無いほどの想いが込められているからだ。
それを読むことで自らの活力にもなるからだ。
「ふふ…、責任重大ね。」
後ろから覗き見ていた妻が
手紙を読む本庄を茶化す。
「裏切るわけにゃ…いかんよなぁ」
手紙に目をやりながら
本庄は身を一層引き締める。
自分がプレーすることで
夢を抱いてくれる子供たちがいる。
夢を叶えようと努力する子供たちがいる。
それ自体が本庄の喜びだった。
ただ一方で
そうした子供たちの情熱の大半が
一時的な想いであることの儚さも
本庄には解っていた。
―だからこそ
今、ひとりの選手として現れた
あの時の少年を目の前にして
本庄の心は震えた。
泥だらけになりながらも全力で球を追い
力尽きて倒れかかるその少年を見て
思わず抱きかかえる。
「………」
初めはおぼろげだった記憶が
心の中でどんどんと明確になってゆく。
腕の中のこの少年は―
あの時の野球少年は
フィールドこそ違えど
変わらず夢を持ち続け努力を続けてきていた。
その少年が今、自分の前に現れたのだ。
この喜びを―
変わらぬ想いに再び出会えたこの喜びを
どう伝えよう。
試合の邪魔をしてはいけないと思いつつも
本庄は目の前の少年に対し
ゆっくりと言葉を紡ぎ始める。
「根性、あるな 野球少年―」
気に入って頂けた方は是非→ 
帰りの途につく車の中で
本庄は10年前のあの時の事を
そして、あの後すぐに送られてきた
1通のファンレターを思い出していた。
「はいけい、本庄勝さま」
いつも本庄選手を応えんしています。
おれも本庄選手のように
キャッチのヒーローになりたいです。
だから本庄選手にもらったこのグローブで
たくさんたくさん れん習して
ぜったいに本庄選手みたいに
なれるようにがんばります。
そして、いつか本庄選手にも
見てもらいたいとおもいます。
らい門太郎
「ふふ…、責任重大ね。」
「裏切るわけにゃ…いかんよなぁ―」
気に入って頂けた方は是非→ 
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