Good-bye. Morning glow
空は鮮やかなグラデーションを描きながら
徐々にその姿を変えていく。
世界のすべてが紫色で覆われ
あたかも自分だけが存在しているかのような
そんな錯覚に陥る瞬間―
朝日を迎える前のほんの僅かな時間。
いつの頃からか十文字は
一人、この時間を過ごすことが多くなっていた。
静寂に包まれた世界の中で
唯一、その時間だけは赦される気分になれたからだ。
十文字は自身の心の中に在る
苛立ちをどうしていいのか解らなかった。
何にぶつけていいのか解らなかった。
黒木や戸叶と一緒にいる時は
ソレを忘れることが出来たが
どこかモヤモヤしていた。
只、この時間を過ごしている間だけは
それでもいいと思えたのだ―
「眠れないの?」
運転席で寝ていたハズのまもりが降りてきて
一人、空を見上げていた十文字に訊ねる。
「ん? あぁ、姉崎か」
「…綺麗な朝焼けだね」
「…もう、見ることは無いけどな」
「うん、このまま行けば今日中にはラスベガスに着くものね」
「…いや、そういう意味じゃ」
「え?」
「あぁ…なんでもない。コッチの話だ」
まもりは不思議そうな顔でこっちを見ていたが
それを遮るかのように
荷台で寝ていた栗田の寝言が聞こえる。
「…クリスマスボウル行こうねっ!…ムニャムニャ」
「フゴッ!」
それに答えるかのような小結の寝言。
「ふふっ」
「ははっ」
まもりと十文字は顔を合わせて思わず苦笑する。
「さ、もう寝ようぜ。今日も頑張らねぇといけねぇしな」
「…うん、そうだね」
最初は、確かに仕方なくだった。
それでも、こうした皆の想いに触れるうち
気付けば、自身の想いもまた
ある方向へと向かっていった。
今の自分は以前の自分とは違う。
自分の中でモヤモヤしていた 「何か」 を
ぶつけられる対象が出来たのだ。
自分にとって大切なものが見つかったのだ。
(こいつらをクリスマスボウルに連れて行ってやりたい)
(なんとかその力になってやりたい)
想いを再確認する為
久しぶりにこの時間を過ごしてみたものの
もう十文字にとって
この時間は必要ないものになっていた―
空は鮮やかなグラデーションを描きながら
徐々にその姿を変えていく。
その色は紫からオレンジへと移り変わり
朝日もまた、その力強さを増し始める。
デスマーチ40日目
ラスベガス到着まで あとわずか。
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